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日本の鉄鋼ADは結果的に何をもたらすか

 経済産業省と財務省が7月に中国と台湾製のニッケル系ステンレス冷延鋼板と鋼帯、8月には中国と韓国製の亜鉛めっき鋼板(GI)と鋼帯についてアンチダンピング(AD)調査を始めたと公表した。状況を注視している関係者の反応はどうなのか。

 鉄鋼AD(アンチダンピング)措置は、国外からの鉄鋼製品のダンピング輸出によって国内産業が被害を受けていると判断された場合、ダンピング価格と国内価格との差を相殺するために課される関税のこと。中国の過剰生産と輸出増なども背景に、最近再び関心が高まっている。

 これに関し国内業界人の反応は様々だが、一部に「無理がある」との声も出ている。そもそも、韓国、中国の国内市況はどうなのか。不当な 廉売にあたるのか、も課題になりそうだが、海外材の席巻によって、どの程度の「損害」が国内の鉄鋼産業に出ているのかも判断ポイントになりうるだろう。さらに、自動車産業をはじめ造船業などでも近国材の使用は常態化しており、国内高炉メーカーがそれを追認した経緯もある。そうした状況を踏まえて、なおユーザーの使用を国内メーカーが制限するという事態に至った場合、それをどう考えるべきかも論点になりそう。